「漢字の漢字」はヤな感じ
文章は書いてある内容はもちろん、「読みやすそうに感じるのか」も重要です。
その文章をパッと見て、「漢字だらけで読むのが面倒くさそう」、「幼稚な表現が多くて、論理的な内容になっているのか不安」などマイナスの印象を覚えてしまえば、読者は読もうとする心にブレーキをかけてしまいます。内容を疑いながら読んでしまい、時には曲解し、その文章を素直に読み取れなくなるでしょう。
この不幸な行き違いを避けるためにも、文章は見た目も整えなければなりません。というわけで今回は、そのカギとなる「漢字の使用頻度」にはじまり、文章を読みやすく見せる方法を模索していきます。
ひらがなも適度に交ぜて、読みやすそうな文章を書きましょう。
続きを読む「因果関係」を正しく伝えて、スラスラ読める文章に仕上げよう
「伝わる文章」の条件とはなんでしょうか。易しい言葉を用いることでしょうか。記号や箇条書きなど、伝わりやすい表現を用いることでしょうか。
どちらも正解です。しかし表現方法にこだわるだけでは不十分でもあります。文構造がわかりやすくなっているのか、特に因果関係が正しくつなげられているのかも、文章を読みやすくする重要なポイントなのです。
続きを読む「こそあど」面倒くさすぎる問題を解決するために、使用基準を6つ設けました
便利でつい多用しがちなのですが、「こそあど」には明確な使用基準がなく、どれを用いればよいのか混乱することもままあります。それでいて文意を左右することがあるのですから、なんとも罪深い言葉です。
というわけで今回は「こそあど(指示語)」について探りたいと思います。
「これ」「それ」「あれ」「どれ」の使用基準を明らかにすべく、例文も交えて考察を加えました。項目数は6項目。特に「これ」と「それ」の使い分けが難しく、項目数も膨らんでしまいました。
しかしそれは裏を返せば、「こそあど」が様々な役割を果たせることを意味します。その用法を熟知しておけば、文意を正しく伝えるヒントも得られるに違いありません。しっかりと理解して、相手に伝わる文章を書くための糧としましょう。
物理的な距離
ここで書く(近距離)
そこで書く(中距離)
あそこで書く(遠距離)
どこかで書く(不明)
距離感とは相対的に判断されるものなので、比較対象に応じて距離感も変化します。つまり指示語の使用基準も、比較対象に応じて変化します。
この席で書いてください(席を移動しないで良い)
その席で書いてください(近くの席に移動する)
あの席で書いてください(遠くの席で書く)
どこで書いても構いません(席は自由)
上記は「この建物の中」における、相対的な距離を指示語で示していました。では次に、比較対象を「周辺の建物」まで広げてみましょうか。
ここで提出してください(この建物の中で)
そこで提出してください(近くの建物を指して)
あそこで提出してください(遠くの建物を指して)
〇〇が受付となります。そこで提出してください(指させる距離にはない、かなり遠方の建物)
目視できる範囲にその建物があるならば、「ここ」「そこ」「あそこ」を用いて距離感を示すことができます。その建物が近場にない場合は、具体的な場所を示したうえで「その」を用います。
心理的な距離
嫉妬心。この気持ちが努力に結び付く
⇒「嫉妬心」が自分にとって行動原理となり得るほど強い感情だと感じている。自分事として捉えているため、「この」を用いる
向上心。その気持ちもなくはない
⇒「向上心」も持ち合わせているが、そこまで強くはない。自分事と他人事の中間に位置するため、「その」を用いる
諦念。あの気持ちに屈してはいけない
⇒「諦念」は受け入れがたい気持ち。つまり限りなく自分事と遠いため、「あの」を用いる
感情がグチャグチャだ。どの気持ちに寄り添えばよいのだろう
⇒心の距離感が不明。一人称と同じように「どれ」を用いる
「物理的な距離」とほぼ同じ用途となります。伝達者の判断基準に応じて、指示語の判断基準も変化する点も同じです。
ただし「心理的な距離」は「物理的な距離」よりも判断基準が曖昧になりやすいので、執筆者と読者の間に齟齬が生じやすくなることは覚えておきましょう。
主体となる人称
わたしはこの話が好きだ(一人称)
あなたがそれを言いますか(二人称)
彼はあのことに納得していない(三人称)
「主体」に重きを置いた判断基準となります。これは古くより用いられてきた基準であり、
「これ⇒わたし」
「それ⇒あなた」
「あれ⇒その他」
「だれ⇒不明」
という使い分けがされてきました。ただしこの判断基準は矛盾もよく生じるため、他の基準も合わせて使いたいところです。
また「主語」ではなく「主体」に注目している点もややこしいですね。例えば以下の文章では、主語と指示語が全くかみ合っていません。
相手:文章を書くと記憶力が上がるよ
自分:その話、詳しくお願い
相手:これは教授が言ってたことなんだけど、(以下略)
2文目の主語は「私に」ですが、「その話」をしたのは相手であり、指示語の主体は「あなた」となります。つまり「それ⇒あなた」が成立するため、この表現は正解となるわけです。
では3文目はどうでしょうか。「これ」は後に続く言葉を指しており、その言葉を言ったのは「教授」、つまり主体は「その他」となります。これはおかしな話です。基準に従うのであれば「あれ⇒その他」となりますから、「あれは教授が言ってた」とすべきでしょう。
しかし実際は「これ」が正解であり、「あれ」を用いるとむしろ違和感を与える文章になってしまいます。つまりこの項目を用いて判断すること自体が間違いなわけです。このように矛盾が生じることも多々あるのですから、やはり指示語の分類は一筋縄ではいきません。後述する項目も駆使しつつ、最適な指示語を探っていく必要があります。
説明する⇔結論付ける
指示語はある種の接続語として働く場合があります。「AはBです。それはCを意味します」、「AはBです。これはCを意味します」と言った具合に、前後の文をつなぐ「順接」として機能するわけです。
「あれ」に関しては「過去と現在をつなげる」という用法で用いることができますが、「それ」と「これ」を使い分ける判断基準は難しいものがあります。解決策としては、文のニュアンスに注目してみると、正解が見えてくるかもしれません。
愛情を伝えた。あれは本能からの行動だった
⇒「あれ」を用いることで、「過去を振り返る」というニュアンスが生じます。それゆえに前後の文で時間軸が異なっている必要があります。
愛情を伝える、それは人間の本能である
⇒「それ」を用いることで、「愛情を伝える=人間の本能」であると順当に伝えることができます。説明するというニュアンスが強くなるので、後続文には説明や解説をつなげやすくなります。
愛情を伝える、これは人間の本能である
⇒「これ」を用いることで、「愛情を伝える」という句を強調できます。結論のニュアンスが加わるため、話題を切り替えやすくなります。
対象が具体的⇔対象が抽象的
指示語の対象が「具体的な内容」なのか「抽象的な内容」なのかによって使い分けます。
牛丼に卵をかける。これがたまらない
⇒「牛丼に卵をかける」は具体的な行為であるため、「これ」を用います。
生きること、それ自体が戦いだ
⇒「生きること」の具体的な内容は人によって異なります。つまり抽象表現であるため、それを指す言葉も「それ」となります。
「生きることは感謝すること」。あの言葉が忘れられない
⇒過去に聞いた具体的な言葉を指して、「あれ」を用いています。
卵にチーズ、紅ショウガ。牛丼はどれを乗せても美味しく頂ける
⇒具体例をいくつか挙げている場合は、それらをまとめて「どれ」と表すことができます。
時間軸
「あれ」が過去を示せることはすでに伝えましたが、「それ」と「これ」にも時間軸を示す働きがあります。
感動して泣いてしまった。あれは良い作品だった
⇒「感動して泣いた」のは過去の出来事。それゆえに「あれ」を用います
ひたすら文章を書く。それだけでは語彙力は向上しない
⇒「ひたすら文章を書く」は現在の話。それゆえに「それ」を用います
語彙力の向上。これを実現するために辞書を読む
⇒「語彙力の向上」を望めるのは未来の話。それゆえに「これ」を用います。
以上、「こそあど」の使用基準を考察させていただきました。
距離感やニュアンス、時間軸など様々な意味を示せるため、「こそあど」を使いこなすことができれば、文意もより正しく伝えられるようになります。ここぞという箇所に用いて、読みやすい文章を仕上げましょう。
和語・漢語・外来語を正しく理解して、伝わる文章を書こう
和語・漢語・外来語。日本語では主にこれら3つの語種を組み合わせて文章を書いていきます。どの語種を用いるのかは重要です。たとえば語種ごとにニュアンスが微妙に異なってくるので、文脈に応じて適切な語種を当てなければなりません。
めし(粗雑)⇔ご飯(丁寧)
宿(日本風の宿泊施設)⇔ホテル(西洋風の宿泊施設)
また語種の選択は「漢字・カタカナ・ひらがな」のバランス調整に使えますし、音読のリズムを整えるにも便利です。パッと見た時に読みやすさを感じさせたり、実際に読んでみてスラスラ読めるようになるなど、ささやかながら確かな恩恵を与えてくれます。
そこで当記事では、語種をうまく選択するためのヒントとして、和語・漢語・外来語における特徴をそれぞれまとめていきます。適切な表現を選択していくことで、かゆい所にも手が届く記事を完成させましょう。
和語
古来より日本で用いられていた語がこれに該当します。ひらがなで表現される語、あるいはひらがなと併用される漢字を指すことが多く、漢字で表される和語はしばしば漢語と混同されます。
和語⇒山、文(ふみ)、つつましい
漢語⇒山岳、文(ぶん)、遠慮がち
「和語=訓読み」と覚えておけば、基本的に問題ありません。ただし語によっては厳密に区分できない場合があります。例としては「文」を上げられます。「文」は古来より、日本と中国どちらにおいても用いられてきた漢字です。それゆえに「ふみ」と読めば和語になり、「ぶん」と読めば漢語となる、ややこしい字になってしまいました。
とはいえ和語・漢語に関しては、わざわざ分類する必要はないのかもしれません。そもそも日本人は、意識せずともこの2種を使い分けられるためです。
たとえば「神(かみ)」は和語に当たりますが、それと馴染み深い語である「神社(じんじゃ)」は漢語であり、「神々しい(こうごうしい)」は和語と漢語を組み合わせた混種語となります。「神」は文脈に応じて読み方が変化する、面倒くさい語なわけです。
ところが日本人の読者はこうした区分を意識せずとも、「神」にまつわる語を正しく読むことができます。「神社(かみやしろ)や「神々しい(かみがみしい)」と誤読することはないのです。
こと漢字においては、それが和語・漢語どちらに該当するのかを知る必要はありません。あえて言うのであれば、漢字を用いる際には「ニュアンス」や「見栄え」を意識しておくと良いかもしれません。
同じものを示す語であっても、和語と漢語でニュアンスが微妙に異なることがあります。
弱る(和語)⇒元気がなくなる、問題が起きて困る
弱体化(漢語)⇒能力が低くなる、問題が起こりやすくなる
文脈に応じて漢語・和語を使い分けることで、細かいニュアンスまで表せるようになります。あるいは和語に基づいた漢字はひらがなと併用することが多いため、文章を視覚的にやわらかくできます。パッと見た時に「読みやすい」という印象を与えられるので、読者にその文章を手に取ってもらいやすくなるわけです。
漢語
中国から輸入してきた言語で、漢字の「音読み」に当たる語でもあります。ひらがなに頼らず漢字だけで組み合わせていくため、文章が視覚的に硬くなるという特徴があります。
また漢語は和語よりも意味の幅が狭いため、特定の物事や状況を説明することに向いています。さらに漢字同士を組み合わせることで、意味を限定することもできます。
しずめる
⇒沈める、鎮める、静める弱い(方向性・程度があいまい)
⇒脆弱、貧弱、軟弱、薄情(「弱い」の方向性・程度を示せる)
なお漢字には、意味を推測しやすいという利点も備わっています。その熟語を知らずとも、漢字の並びからその意味を読み取れるのです。
玉石混交
⇒「玉石混交」の意味を知らずとも、「玉(宝石)」と「石」が「混交」している、すなわち「価値があるものとないものが混ざっている」と推測できるhodgepodge
⇒「hodgepodge」自体の意味を知らなければ、その意味を理解できない
これは漢字が表意文字であることを活かした表現方法と言えます。もう少し詳しく説明しましょう。
漢字はもともと、象形文字の延長上で作られました。象形文字とは言わば、物事をとてつもなく簡略化して書いた絵です。頂上が尖っている長大な地形を「山」、細長く曲がりくねった溝を水が流れていく様を「川」といった具合に、物事や事象を簡略化して伝えるために描かれました。
「文」もそのひとつですね。「文」はもともと「単なる模様」でした。まだ文字が誕生していない時代、青銅器に刻まれていた模様に過ぎなかったのです。しかし象形文字が蓄積されるにつれて、「文字を書く」という概念も浸透していくことになります。そしてそれが契機となり、「文」という模様にも意味が与えられます。「文」が単なる”模様”から、「文字を書く」という意味を持つ”文字”へ格上げされたわけです。
象形文字をそのまま文字にした、あるいは組み合わせたものが漢語ですから、漢語にも「絵を文字へ置き換える」概念は備わっています。だからこそ、たとえその漢字の意味を知らずとも、その形から意味を推測できるわけです。
そしてこの特性はそのまま、「造語を作りやすい」という漢語の特徴にもつながります。たとえばそうですね。「文棄」という言葉はいかがでしょうか。私が勝手に作った言葉なのですが、「文を廃棄すること」、転じて「文章を発表せずに消すこと」を意味するのだと、なんとなく想像してもらえるかと思います。
造語はニュアンスしか伝えられない曖昧な表現なので多用すべきではありませんが、文章に個性を持たせてくれる便利な表現でもあります。時には漢字を組み合わせ、ありもしない熟語を作ってみるのも面白そうです。
外来語
中国以外から輸入してきた語を指します。日本語ではカタカナを用いることで、その語が外来語であると端的に示すことができます。
computer(英語)⇒コンピューター
beer(オランダ語)⇒ビール
champagne(フランス語)⇒シャンパン
karte(ドイツ語)⇒カルテ
もちろん外来語をカタカナに直さず、そのままローマ字で表記することもできます。しかし綴りや発音のルールは国籍ごとに異なるため、複数の外来語をローマ字のまま表記してしまうと、どの言語に基づいて発音すればよいのか、混乱を招いてしまいます。
その点、カタカナはあらゆる言語を日本語として扱えますから、細かいことを考えずとも文章が読めるようになります。ローマ字の読みかたを考える手間も省けますし、表記をカタカナで統一することで文章にも統一感が生まれます。
なお語によっては、外来語に漢字を無理やり当てはめた「当て字」が存在します。
koffie(オランダ語)⇒コーヒー⇒珈琲(漢字)
tabaco(ポルトガル語)⇒タバコ⇒煙草(漢字)
漢字とカタカナのどちらでも表せる場合は、原則としてカタカナを用いましょう。「外来語=カタカナ」というルールを守ることで、文章に統一感を持たせやすくなります。
外国から新たな概念を輸入してきた場合、既存の概念とは区別するために、あえて日本語に翻訳せずカタカナ語で表記することがあります。例として、「ライティング」というカタカナ語を挙げてみましょうか。
単に「文章を書く」と伝えるだけでは、その具体的な内容までは見えてきません。「報告書をまとめる」ことも、「研究論文を完成させる」ことも、一緒くたに「文章を書く」でまとめられてしまいます。
ところが、「ライティング」という表記を用いると、不思議なことに「文章を書く」の方向性も定められてきます。「文章の内容」と言うよりも、「文章を書く行為そのもの」に注目しているニュアンスが加わり、「文章術を駆使して文章書く」という意味合いが出てくるのです。
「ライティング」を用いることで結果的に、内容が重視されるコンテンツ(報告書や論文)ではなく、書くときの技術が重視されるコンテンツ(ブログ記事など)を書くのだと、暗示できるようになります。
つまりカタカナ語を用いると、原理は違うものの表意文字と同様に、「言葉以上のニュアンス」を相手に伝えられるようになります。
もちろんその相手もカタカナ語の意味を正しく理解している前提の話となりますから、カタカナ語を安易に使用してはいけません。読者が自分と同程度の知識を有している場合のみ、カタカナ語は正しく機能します。読者が知識を有していないことを想定するのであれば、カタカナ語を避けるか、もしくは解説を入れる必要があると、頭の隅に入れておきましょう。
「ですます調」にはじまる文体と敬語の使い分け
文体とは
「ですます調」、「だである調」など、書き言葉における文の形式を指します。日本語では複数の文体を組み合わせて文章を書くことも珍しくありません。ただし文体を使い分ける基準が明確でないと、読者に違和感を与えてしまいます。客観的に説明する際には「ですます調」、自分の意見を述べる際には「だである調」など、使用基準が読者にも伝わるように工夫しましょう。
「ですます」と「だである」の使い分け
「ですます調」は丁寧で親しみある印象を与えられる口調です。強い主張をする際にも相手に敬意をもって伝えられるので、嫌悪感を与えづらくなります。また「伝える相手がいること」を前提として使用されるので、執筆者が「伝える意識」を持ちやすくなります。
一方、「だである調」は「自分が主張すること」に重きを置いており、強い主張がさらに強調されるという特徴を秘めています。また「伝える相手を意識しない」口調でもあるので、情報収集やアイデア出しをする時など、自分自身に重点を置く作業の際に「だである調」を用いると、効率的に作業を進めることができます。ただしその文章をそのまま相手に伝えてしまうと、威圧感や強制感を与えかねません。「だである調」で伝える際には、意見が強くなりすぎないように語彙を調整すべきでしょう。
位相語
位相とは、話し手の属性(年齢・性別・職業・立場など)を指します。人は位相に応じて言葉を使い分けており、それは語彙や口調の差として現れます。
めし食った(粗野)
ごはんを食べた(一般的)
食事を取りました(丁寧)
文章において位相は、専門用語の頻度、丁寧語の使用、語尾の統一などによって表されます。位相を意識しておくと「執筆者と読者の関係性」が明確になるので、文章の方向性も定めやすくなります。
たとえば『日本語の文法』について考察していく文章を書くとしましょう。その場合、執筆者の位相は「教師」であり「国語の専門家」であり「効率的に知識を説明する立場」となります。逆に読者の位相は「学習者」であり「国語の知識がない人」であり「積極的に学ぼうとする立場」であるわけです。
これら位相を意識すると、執筆者が使用すべき位相語も定まってきます。落ち着いた丁寧な口調が望ましいので「ですます調」を選択したいところですし、必須知識を強調すべく「でしょう」や「なのです」といった語尾の強調も多用することになります。
また読者の位相を考慮すると専門用語はなるべく避けたいところですし、日常会話で用いるような「軽快な表現」も極力抑えることになります。このように、分野・読者像が変化すれば、最適な位相・位相語も変化しますから、文章を書く際には、その前に執筆者と読者の関係性を定めておきたいところです。
役割語
特に極端な位相を表したい場合に用いる語です。現実ではありえない人物像も表現できるため、特に物語を書いていく際には重宝します。
わたくし文筆を嗜んでいましてよ(お嬢様)
尊敬語
動作の主体を高めることで、相手に敬意を示します。用法としては多くの場合、「お+動詞+られる」の形で用いられます。
先生がお書きになる
先生が書かれる
ただし例外もあります。たとえば日本語には「目上に対して二人称を用いない」というルールがあるため、二人称を用いずとも敬意を表すことができる表現を優先してきました。
×あなたは何時に出かけますか
〇何時にいらっしゃいますか
あるいは「相手の意向を直接訪ねるのは失礼に当たる」というルールに基づいて、相手の行為を間接的に言い表すこともあります。
×お客様、コーヒーをお飲みになりますか
〇お客様、コーヒーはいかがですか
上記の例では、「飲む」の前段階である「もらう」に焦点を当てて、間接的に「飲む」を表現しているわけです。
なお余談となりますが、湾曲的に表現して自分の意を示そうとする手法は、日常会話の中でも見られます。
△窓を開けてくれる?
〇その席、暑くない?
上記は「窓を開けてほしいと」と直接頼むことが憚られるため、まず相手に「暑い」という同意を求め、「窓を開ける」という目的を共有させています。これによって自分の意を伝えることなく、相手に自分の希望を叶えてもらえるわけです。
ただし婉曲表現は不快に感じる人もいるので、文章においてこの手法を用いる際には、読者の反応をあらかじめ予想しておく必要があります。
謙譲語
動作の主体を低めることで相対的に相手を高めます。「お+動詞」あるいは「お+動詞+丁寧語」の形で用いられるほか、「伺う」、「参る」など単独で敬意を示せる語もあります。
お書きする
お書きいたします
伺います
謙譲語は相対敬語の一種でもあります。相対敬語とは文字通り、言葉遣いによって”相対的に”相手を高めようとする言葉を指します。たとえば「父親」に対する言葉遣いも、文脈に応じて変化します。
父さん、肩でも揉もうか?
(他人に向けて)父は外出しています
これは「身内に対する敬意を他人にも伝えるのは憚られる」という日本のルールに基づいた用法です。「誰を高めたいのか」を意識しておくことが、敬語を上手く使えるようになるヒントなのかもしれません。
丁重語
謙譲語の一種でありながら、誰も低めない表現です。これは相手に対して敬意を示すとともに、「自分が丁寧でありたい」という心構えも表しています。
夜も更けてまいりました
いたします、申します、存じます
丁寧語
文尾を丁寧にすることで、相手に敬意をあらわします。また謝意を表すこともできるので、対等な相手に対しても用いられやすいという特徴があります。
文です
書きます
ごめんなさい
敬語表現とは少しずれるのですが、丁寧語は心理的な距離を表すために用いられることもあります。ただし口語的な用法となるので、文章を書く上ではあまり意識する必要はないでしょう。
(聞き分けのない息子に対して)もう知りません。勝手にしてください。
・美化語
「自分が丁寧でありたい」という心構えから使用される口調です。他の敬語表現とは異なり、相手に対して敬意がなくても使用できます。「ですます調」と同様に、物腰が柔らかい印象を相手に与えることで、穏やかな性格であると認識してもらえます。
お箸
お弁当
ご飯
以上、文体と口調に関してまとめさせていただきました。
これら知識は「執筆者と読者の関係性」を明らかにし、伝わりやすい文章を書くためのヒントとなってくれます。適切な語彙を用いるとともに、それらが伝わりやすくなる口調で伝えましょう。
伝えたい情報だけでなく、それら情報をいかに装飾するのかにも着目すると、「伝わりやすい文章」を書きやすくなるに違いありません。
「品詞」とはなにか。国語教育に基づく分類法・用法まとめ
品詞は分類法のひとつで、語の意味・性質に基づいて、類似する語を各項目にまとめたものを指します(名詞・動詞・形容詞など)。
品詞を理解すると文構造が把握しやすくなり、読解力や執筆効率を高めやすくなります。また品詞それぞれの用法を意識しておけば、誤用にも気づきやすくなります。校正作業が楽になるので、文の質を上げるにも役立つわけです。
当記事は要点を掴みやすくするために、箇条書き形式で各品詞を説明していきます。文構造を把握するためのヒントとなれば幸いです。
概要
・「品詞」と「文の成分」は別物
※品詞:名詞は名詞。語が変化することはない
※文の成分:文脈に応じて語が変化する。たとえば名詞は以下のように役割が変化する
文が(主語)
文だ(述語)
文の(修飾語)
・人によって品詞の分類体系は異なる
・語を分類する目的に応じて、分類基準も異なっている
※語の意味、文法上のルール、文における役割 など
・一般的とされる品詞の分類体系は以下の通り
名詞、動詞、形容詞、副詞、連体詞、助詞、助動詞、接続詞、感動詞
・上記はさらに分類可能
・「自立語」または「付属語」
・「活用する」または「活用しない」
※活用⇒文脈に応じて語尾が変化すること
・格助詞の種類に応じて、語尾も変化する
例)書かないー書きー書くー書けばー書こう
・学校文法では活用を6分類している
・未然形、連用形、終止形、連体形、仮定形、命令形
自立語
・単独で文節となり得る語
例)文、書く、美しい、しかし
・活用の有無でさらに分類可能
・活用がある⇒動詞、形容詞
・活用がない⇒名詞、副詞、連体詞、接続詞、感動詞
動詞
・国語教育では5種類に分類される
・五段動詞、上一段動詞、下一段動詞、カ変動詞、サ変動詞
・他にも活用形が存在する(「て形」など)
五段動詞
・活用が「あいうえお」すべてに変化し得る
書かないー書きますー書くー書けばー書こう
上一段動詞
・活用に必ず「い」が入る
見ないー見ようー見ますー見るー見ろ
下一段動詞
・活用に必ず「え」が入る
見えないー見えようー見えますー見えるー見えろ
カ変動詞
・「来る」のみに見られる活用
サ変動詞
・「~する」のみに見られる活用
※以下の画像に各動詞の活用形をまとめておく

形容詞
・性質や状態を表せる語
・述語として単独で用いるほか、名詞を修飾することもある
例)その文は美しい。素晴らしい文を書いた。
・さらにイ形容詞、ナ形容詞に分類される
イ形容詞
・連体形が「い」で終わる。単に形容詞とも呼ばれる
例)美しいー美しく
ナ形容詞
・連体形が「な」で終わる。形容動詞とも呼ばれる
例)独特なー独特のー独特でー独特だ
※自立語(活用あり)における活用形は以下の通りにまとめられる

名詞
・それ単独で物や人、概念などを表せる語
・文脈や付属させる助詞に応じて、具体的な意味やニュアンスが変化する
例)昼過ぎに私は文を書いた
例)愛情を注ぐ(態度)、料理は愛情(心構え)
副詞
・動詞、イ形容詞、ナ形容詞、他の副詞を修飾する語
例)たくさん書く、とても美しい、極めて重要だ、もっとたくさん書く
連体詞
・名詞だけを修飾できる語
・形容詞とは違い述語になれない。活用もしない
例)ある日、大きな川を泳いでこの石を見つけた
接続詞
・前後の論理関係を示す語
例)文を書いたけれども公表しなかった(逆説)
例)もし話すならば原稿を用意しておこう(仮定)
※文と文をつなげる接続詞を特に接続副詞と呼ぶ。前後の文を強調したり、より詳しく説明することができる
例)文を書いた。だが公表はしなかった
例)もしかすると発表するかもしれない。原稿を用意しておこう
・接続詞は接続語としてのみ機能する語を指す
・助詞は「文節関係を示す」という機能も備えているため、接続詞に該当しない
例)文を書いたが公表しなかった(接続語として機能)
例)私が書く(文節関係を提示しているだけ)
感動詞
・感情や反応を示す語
・独立語としてのみ用いられる
例)ああ素晴らしい
例)あ、終わった?
付属語
・単独では文節になれない語
・自立語に付属させて用いる
例)私が書いて出した
・活用の有無でさらに分類できる
・活用がある⇒助詞
・活用がない⇒助動詞
助詞
・付属対象やニュアンスに応じてさらに分類可能
・人によって分類基準や項目数が分かれやすい語でもある
※疑問助詞を終助詞の一部として捉えるか否か、など
・同じ助詞でも文脈に応じて意味が変化する
本で学ぶ(本を用いて)
本で生計を立てる(本を書いて)
文章を書けば?(提案)
文章を書けば伝えられる(仮定)
格助詞
・名詞に付ける
・その名詞と、述語や目的語との関係性を表す
例)文が美しい(主語)、概要から書く(動作の起点)
接続助詞
・活用する語に付ける
・後続部分との論理関係を示す
例)書いたから公開する(順接)
例)美しいけど好みではない(逆説)
終助詞
・文尾に付ける
・執筆者の気分や意図を示す
例)書きますね(やわらかい語尾)
例)書きませんか(提案の意)
副助詞
・名詞や動詞、形容詞など様々な語に付ける
・意味を強調したりニュアンスを加えたりする
例)小学生ですら書ける(難易度の低さを強調)
例)私も書きたい(同調のニュアンス)
助動詞
・動詞に付ける
・態、極性、時制、相、法などを示す
※態⇒受動、使役、可能
例)書かれる、書かせる、書ける
※極性⇒否定、肯定
例)書かない、書く(「書く」はそもそも肯定的)
※時制⇒過去、現在、未来
例)書いた、書く、書くつもり
※相⇒進行、継続、完了
例)書いている、書き続ける、書き終える
※法⇒意思、断定、推量
例)書かねば、書くのだ、書くかもしれない
格助詞の詳細
・文意を左右しやすい要素ゆえ、他の語よりも体系が複雑
・格助詞の種類に応じて、修飾語と述語の関係性も変化する
・が⇒主体(私が書く)
・の⇒連体修飾(私の文)
・を⇒対象(文を書く)
・に⇒到達点(彼に書く)
・へ⇒到達点の途中、方向(書店へ向かう)
・と⇒共同相手(彼と話す)
・から⇒起点(書店から帰る)
・より⇒起点/比較対象(書店より戻る/私より優
・で⇒場所(書店で買う)
※ただし例外も多い
・水が飲みたい(主体なし)
・書店を出た(対象なし)
・彼に評価された(到達点なし⇒受動の主体)
・彼の読むのを見た(連体修飾なし⇒主体)
※話し言葉では格助詞が省略されがち
例)私書くよ、文字書こう
※格助詞はそれぞれ、「は」に置き換えられる(題目化)
・私が書く⇒私は書く
・文を書く⇒文は書く
・書店に行く⇒書店は行く(書店には行く)
・書店へ向かう⇒書店へは向かう
・彼と話す⇒彼とは話す
・書店から帰る⇒書店からは帰る
・書店で買う⇒書店では買う
※動詞に応じて必須格も変化する
※必須格⇒文意を成立させるために必要となる格
×私が書く(目的格が不足)
〇私が文を書く
「書く」には「が・を」格が必要
※同じ語でありながら必須格が異なる場合もある
×私が教える(どこで?)
〇私が学校で教える
⇒教える(教鞭をとる)は「が・で」が必須格
×私が教える(何を?)
×私が文を教える(誰に?)
〇私が彼に文を教える
⇒教える(説明して理解させる)は「が・に・を」が必須格
以上、品詞における分類体系をまとめていきました。
品詞を理解していると語のニュアンスや論理関係を掴みやすくなるため、文意や文の流れを正しく判断できるようになります。もちろん執筆の際にもこれら知識は応用できますから、読者の誤解を招かない「読みやすい文章」を書くことにもつながります。
正しく品詞を理解することで、正しい文章を書けるようになりましょう。